5月20日付けで、国際公会計基準審議会(IPSASB)から、「国際公会計基準(IPSAS)による政府債務リストラクチャリングの会計」と題するQ&A形式のスタッフ文書が緊急に公表されましたので、お知らせします。
【本Q&Aの位置付け】
ご承知のようにギリシャの政府債務に関する危機的な状況が続いており、ユーロの為替相場をはじめ、さまざまな影響が生じております。
この文書は、ギリシャの危機的状況を受けてIPSASを引き合いに出す報道が増えているため、IPSASに詳しくない方々の疑問に答えるべく作成されたものです。スタッフ文書であり、審議会の公式文書ではないという位置づけです。
【ギリシャに関する背景】
EUは、2020年を目標に、域内の政府会計を欧州公会計基準(EPSAS)に統一する予定です。
現状、域内各国は異なる会計基準を採用しています。(スイスはIPSAS適用済)
EPSASは、IPSASをベースに欧州特有の内容を盛り込んで作成中です。
ギリシャ政府は、現状IPSASを使用しておらず、域内他国との比較可能性が低い状況です。
ギリシャは、GDP比の財政赤字比率を操作して低く見せていました(3.7%⇒2009年秋に操作発覚。本当は13.6%)
この不正操作がギリシャ危機の発端となったそうです。
IPSASを正しく適用し、さらに適切な監査を受けることで、ギリシャのような債務危機は今後は早期に発見・対処できるはずです
【本Q&Aの概要】
IPSASは、金融商品を取り扱う400ページにわたる基準を定めています(IPSAS第28号~第30号)
このIPSAS第28号~30号は、IFRSをベースに、公的部門特有の論点を盛り込んで作成されています。
IPSASにおいては、金融負債の認識(計上タイミングの決定)と測定(金額決定)を、IPSAS第29号で定めており、これは政府債務のリストラクチャリングを行う際にも適用できます。金融負債は、当初は公正価値で測定し、以後は実効金利法(償却原価法に近い)で増価します。
政府の借入でよく使われるコンセッショナリー・ローンの場合も同様です。コンセッショナリー・ローンとは、長期間、低金利、条件が緩い等の特徴を有する、国際機関等からの借入金を指します。
IPSASにおいては、金融負債は一定の条件に該当すると認識を中止されますが、その原因の一つは、「契約の実質的な変更」です。
金融負債の手数料込み予想CFの割引現在価値が、未返済の金融負債額の割引現在価値と比較して、
10%以上変動した場合、返済条件が「変更」されたとして扱います。
変更の影響度合いは、当該国のリストラクチャリング固有の内容によります。
変更が「実質的」な場合は、元の負債を即時認識中止し、関連損益を一時損益計上したうえで、実質的な変更をふまえた負債を新たに計上し直すことが必要です。
他に用語の使用法、政府財政統計との関連等のQAがありますが、ここでは上記のコア部分の解説にとどめます。
本Q&Aの原文へのリンク先は以下のとおりです。
http://www.ifac.org/publications-resources/accounting-sovereign-debt-restructurings-under-ipsas
コーナー編集担当 伊澤賢司・蕗谷竹生